ロリポップソニックザヘッジホッグ

世界の片隅でひっそり生きる女のブログ

初めての二次創作を書く

メモ帳を開いて、いざ!と鼻息荒く推しへの愛を物語にして言葉を紡いでいく。いや、紡ごうとした。が、言葉が全然出てこない。

とりあえず、初っ端から攻めの年下が受けの年上を押し倒してる場面を書き出してみた。

この攻めの少年の綺麗な瞳から溢れ出る綺麗な涙。それに見惚れてしまう攻め。そして、受けは自分の隠していた恋心を自覚する。

…というのが書きたい場面だ。

しかし、いきなり躓いた。この少年は『青い瞳』をしているのだが、もっと小説みたいな『カッコいい言い回し』にしたいので『蒼い目』とした方がカッコいいのでは…?なんて素人臭い考えが湧いてきた。

そもそも『青い』と『蒼い』の使い分けって何なんだろう…

 

書き始めて数行で、詰まる。

とりあえずネットで青いと蒼いの違いを調べ、『蒼い』は適切では無い、と判断した。

メモ帳を見ると、まだ台詞と、地の文が一文しか出来てない。

 

……ええ〜〜〜っっ??めんどくせぇ〜〜っっ??!!こんな…こんな事すら調べていく感じ?というか、自分めっちゃ馬鹿…こんな漢字の違いすら分からないのに、ここから物語を作る??マジか…マジか〜〜〜っっ??

 

私は少し…いや、かなりめんどくさくなった。

それと同時に、小説を書いている人を尊敬した。正直、二次創作で小説はほぼ読んだ事が無く、いいなと思ったタイトルが小説だと少しがっかりするくらい、私は文字を読むのが苦手だった。

だが、その私のめんどくささを凌駕する二次創作の小説に出会ってしまった時の興奮はもう言葉では言い表せない。次の作品を読みたい、そうやってボタンをタップしていく興奮。

私も、あんな風に推しを書けたら…

そう思い直して『めんどくさい』と言う思いを押し込めた。

 

そこからはもう手探りだ。

とりあえず、地の文(そう呼ぶ事も最初は分かってなかった)と主人公の受けのモノローグはどう分ければ良いのか。

この時の私は地の文は漫画で言う四角いモノローグで、『受けのモノローグ』は吹き出しでモヤモヤとしたアレという認識だった。

地の文は、読者が分かる様に主人公が外へ説明していて、吹き出しのモノローグは主人公が自分の中だけで考えている、という使い分け。

 

今振り返ると、一人称なのだからそんな使い分けそんなにしなくても良いのでは…なんて思うのだが、この時は必死。

吹き出しモヤモヤ部分は()で使い分ける事にした。

この時の文章、一人称なのにたまに三人称視点になってたりで今見るととても気持ち悪い。

だが書いている時はそんな事分かっていないし、小説を読んだ事の無い私は一人称と三人称の違いすら気づいていない。

地の文もどうやって書いたら良いかよくわからない。

とりあえず、必死にこれを書き上げた。

 

出来上がって、それを早速友人に見せた。

居酒屋で、メモ帳を起動させてそれを読んで貰う。R18はどうやって書けば良いか分からないので、キスくらいしかしていない作品なのだが、隣で自分の書いたBLを読まれている事は、凄く恥ずかしかった。

因みに友人は腐女子でその漫画作品のファンだが、この作品においては、男と男のCPは考えた事が無いと言っていた。

そんな友人に、自分の推しCP小説を居酒屋で読んで貰う…何だこれは…私は今一体何をしているんだろう。待っている時間が耐え切れなくて、私はビールを一杯飲み干した。

 

ビールの二杯目が半分程になった時、友達が私にスマホを返して「読み終わった」と言って酎ハイを一口飲んで「……よかった」と呟いた。

 

その一言で、私のテンションはMAXまで上がった。恥ずかしいけと、嬉しい。

凄く切なくて、主人公の受けのいじらしさがとても良かったと感想をくれた。

私が上機嫌でビールを飲んでいると、これを支部に投稿してみたら良いんじゃないか、と言われた。

その提案に、「恥ずかしい」「誰が読むんだこんな素人の作品」という考えが駆け巡る。

「読まない人は読まないし、読みたいなと思ったら読む。出さなきゃこのCPの作品は埋もれたままだ」

そんな事を言われて、私はハッとした。

「この推しCP作品が一つでも増える」

それは、彼女が自分の推しCPの作品を見たくても誰も上げてくれなくて、自分で書くしかなかった経験からの言葉。

「自分以外の推しCPの作品が読みたい人は、沢山いる」

そう言われて、私は家に帰って初めて支部に投稿してみた。

タイトルも、少し長めになってしまったが、支部特有の小説の表紙をつけて投稿した。

感覚的には『チラシの裏』みたいなものだった。

 

『自分の作品を読む人は殆ど居ないだろうけど、一人くらい読んでくれたら良いな』

 

そのぐらいの気持ち。

私はその日、自分の初めて上げた小説作品を何回も読むほど、気分が高揚していた。

 

 

これが、九月の初めの話。